ぶらり車いすバリアフリー旅行

バリアフリー旅行計画・宿泊

「車椅子旅行の宿泊」では、観光地の選択とともに重要な宿泊施設の選択について記述しています。車椅子旅行と言えども、宿泊先の要件は健常者と同じで、車椅子で使いやすい館内と客室内動線・多機能なトイレと洗面・自分の体力で湯船に浸かれる温泉が三大要件です。「full-time wheelchair user」「part-time wheelchair user」の視点に基づいて、館内の車いすによる単独移動とバリアフリールーム内のトイレ・バスルーム・ベッド間の移動や大浴場・貸切風呂への車椅子入浴、アクセスなどのサービス情報を入手してよい宿泊施設を選択しましょう。それでは、つぎに手順を説明します。
  • バリアフリールームがあるということだけで選ばない:一例として、「楽天トラベル」に登録されている宿泊施設の数は3.6万を超えます。「バリアフリールーム」で検索すると、約一割の3625と表示されます。しかし、この3625宿泊施設の多くは客室内動線・多機能なトイレの要件しかを満足していないことが多いのが現実です。現在進行形ですが、管理人の調査によると、自分の体力で湯船に浸かれる温泉(正確には浴室内を安全に移動できる・高い湯船の縁を跨ぐことができる入浴補助具があること)満足する宿泊施設は134に過ぎません。従って、予約の際にこの134宿泊施設情報を参考にするかご自分で調査して、電話やメールで宿泊施設とやり取りをしてみよう。
  • バリアフリールームの要件をクリアした後に、館内動線と客室内動線をチェック:駐車場からバリアフリールームまでの動線・客室内の動線がバリアフリーかを確認することが重要です。段差や階段があるか、ある場合はエレベーターやスロープなどの段差解消の術はあるか。バリアフリールームを謳っている高名なホテルでの管理人の経験談をですが、エレベーターを使わないと貸切風呂と食事処に行きことができない建物ですが、なんとこのエレベーターのサイズが6人乗りで、横140cm・奥行き80cm・扉幅80cmなのです。もうお分かりですよね。狭いエレベーター室内で車椅子を90度回転させないと、扉が閉まらないのです。エレベーターの横幅・奥行き幅・扉幅を公開している宿泊施設のホームページはほとんどありません。あるとすれば、「だれでも東京」くらいでしょう!管理人はこの経験以降、面倒でもメールで確認作業をしています。また、こうした確認に快く対応してくれる宿泊施設は、その情報の大切さを知っているから、受け入れ慣れている証拠でもあります。
  • 動線がチェックできたら、客室内の多機能なトイレと洗面所:管理人の経験では、多機能なトイレが使いにくい経験はあまりないです。左図のようなボールを既存の洗面台に載せたタイプは使いにくく、右図のようなボールを既存の洗面台に埋め込んだタイプは使いやすい。
  • 自分の体力で湯船に浸かれる温泉:ホテルの場合はバリアフリールームの温泉でないバスルームがほとんどです。多くの旅館タイプの宿泊施設は客室内のお風呂・貸切風呂・大浴場があります。温泉の視点でみると、客室内のお風呂は温泉ではなく、貸切風呂・大浴場は温泉が多い。管理人の経験で1施設だけですが、客室内のお風呂に温泉をリクエストできるバリアフリーの宿がありました。
    つぎは浴室内安全移動です。客室内のお風呂・貸切風呂は比較的狭く、妻の介助を得ることができ、大浴場は広く不安がありますので、シャワーキャリーか浴室用車椅子・人的サービス提供がある場合のみ、大きな温泉を楽しみます。管理人の経験で1施設だけですが、大浴場に「移動と湯船に浸かれる」シャワーキャリーがあり、その操作を男性従業員が10分置きにしてくれるバリアフリーの宿がありました。
    日本の湯船の高さは50〜55cmもあり、管理人は自宅でも自分の体力で湯船に浸かれずに、リフトは過剰設備ですが、バスボードを使用しています。バスボードに代わる入浴補助具として、外付けの移乗台や広い湯船の縁があります。ここまで確認できればOKです。
  • 最後に可能な選択肢があれば非日常:一昔前のバリアフリールームは、窓もない布団部屋のようなイメージもありましたが、近年は入浴用リフトが景色が見えるような角度で設置されているなど、バリアフリールームや客室風呂や貸切風呂からの眺めも重要視している宿泊施設もありますので、当該宿泊施設に泊まれると、車椅子旅行の醍醐味である「非日常」を満喫できるでしょう!

管理人は障害者になって25年になりますが、「健常者が考えるバリアフリー」と「車いすユーザーが考えるバリアフリー」には大きな差を感じています。さらに車いすユーザーの中でも、「full-time wheelchair user」と「part-time wheelchair user」では大きな差があります。健常者にとっては、床に段差がなく、段差がある場合はスロープが設置してあるだけでもバリアフリーだと思い、また、多くの宿泊施設の経営者がそのことを満足しているだけで、「バリアフリーの宿」をうたっています。
しかし、車いすユーザーにとっては床に段差がなく、段差がある場合は緩やかなスロープが設置してあり、館内を上下移動するための車椅子対応エレベーターがあり、室内を車椅子で自由に移動できるバリアフリールームがあり、トイレも車椅子のまま入れ手すりがついており、日本の高い浴槽の縁を超えて入浴できる入浴補助具あることがバリアフリーなのです。そしてさらに非日常も全く無視することはできません。
例えば、楽天トラベルには3.2万軒の宿泊施設が登録されており、バリアフリーで検索すると5.7千軒がヒットします。しかし、管理人が「車いすユーザーが考えるバリアフリー」の視点でバリアフリーの宿として紹介できるのは数百件止まりと思います。この辺をあなたの障害の程度と正確な情報に基づいて快適な宿泊をされることを願っています。

立地

立地で考えることは、最寄り駅・最寄り駅〜宿泊施設・エントランスまでを車椅子で快適に移動できるか否かです。
最寄り駅は宿泊施設の責任ではありませんが、簡易人はこんなことを経験しました。その宿泊施設の最寄駅は山陰本線(本線と言っても単線です)にありました。その駅は無人駅で、駅構内の線路は複線ですが、前後は単線でした。プラットフォームは複線をはさみ両側にあり、エレベーターがなく奥側のホームからはブリッジを渡らないと改札に出られません。つまり、車いすユーザーは下車しても改札まで行けないのです。諦めました。
最寄り駅〜宿泊施設について、前記の例から始めます。山陰本線は単線で、その宿泊施設までの直通列車は4本/日しかなく、その間の距離は約50kmありますのでタクシーは費用的に無理です。幸い、この宿泊施設に約50kmを運行する送迎バスが1本/日ありましたので助かりました。最寄り駅が車椅子で乗降できるか、送迎バス(「full-time wheelchair user」にとってはリフトまたはスロープ付が必須になります)があるか、車椅子走行で行ける範囲の距離かは大切な確認事項です
最寄り駅〜宿泊施設まで、車椅子を漕いで行ける距離の場合、もう一つ立地でチェックすべきことは、その道路の傾斜度です。道後温泉を訪れた時の体験です。「えひめのバリアフリー情報『おでかけイーヨ』」のホームページに、「最寄駅いよてつ市内電車道後温泉駅より約600m・※道後温泉駅からホテルまでの途中から上り坂となります。」とありました。当時の管理人は道路の傾斜度をあまり気にかけていませんでした。総延長が約600mあると、3%程度の傾斜でもきつく、途中1回休んでやっとバリアフリーの宿に着きました。下は怖くなり、送迎バスを使わせて頂きました。
エントランスまでは、エントランスや駐車場がフラットか、階段があれば緩やかなスロープや段差解消機があることは大切な条件です。「駐車場からホテル入口までスロープが設置されていますが傾斜急です。ホテル入口で体のご不自由な方を降ろされてから車を駐車場に止められた方がよいと思われます。」このような注意書きを掲載している、宿泊施設ののホームページもあります。
EV無跨線橋の利用者30人無人駅
リフト付送迎バス
バリアフリーの宿内急勾配通路

UDルーム

平成30年2月27日(火)10時00分~12時00分に国土交通省の「ホテル又は旅館のバリアフリー客室基準の見直しに関する検討会」でホテル・旅館のバリアフリー化の現状等に関するアンケート調査結果が報告された。調査結果では提示仕様を満たしたUDルームは194施設(32.0%)にあるとされている。しかし、その調査項目は、エントランス〜UDルームまでの車いすルート・車いす使用者が利用可能なレストラン・車いす使用者が利用可能なトイレ・UD ルーム・貸出備品について調査しているが、この調査内容では重度障害者の要望を満足していない。大別しただけでも三つの重要な課題が抜け落ちている。一つ目は旅行に大きな楽しみである「入浴」を重度障害者が楽しめる設備の有無。二つ目は貸出備品中に入浴補助具として「シャワーチェア」しか問われていない。これでは浴室内の歩行の安全安心と「狭義の入浴(湯船に入る)」が担保されていない。三つ目はレストランや浴場やトイレにアクセス可能な障害者対応エレベーターが調査項目から抜け落ちている。最近の体験ですが、普通に乗れるエレベーターがなくても、バリアフリーを公言している宿に遭遇しました。
今の管理人が決めている、バリアフリーの宿の基準はつぎの通りです。しかし、国土交通省の基準で満足すれば、重度障害者(身体障害者手帳1級2級)の旅の大事な楽しみが欠如した旅行をせざるを得なく、逆にバリアフリー化の流れに水をさすことを危惧しています。
  • エントランス〜フロントがフラットかスロープあり
  • 館内がフラットかスロープあり、浴場・食事処・ショップ・ラウンジなどへ車椅子でアクセスできる、最低でも車椅子で普通に乗れるエレベーターがある。下図①車椅子で乗れないエレベーターのように、奥行きが85cmしか無く、ドアが閉まらない6人乗りエレベーターしかないが、バリアフリーの宿を謳っている宿泊施設があるので確認が必要です。9人乗りエレベーターの奥行きは110cmあるので大丈夫です。東芝も三菱も同じです。
  • 客室内を車椅子で移動でき、トイレ・バスルームへの動線がフラットかスロープあり
  • 浴室に入浴補助具がある「シャワーチェア(バスチェア)・シャワーキャリーまたは洋室用車椅子(下図②シャワーキャリーや③浴室用車椅子)・移乗台(バスボード(⑤バスボード)・腰掛けスペース・移乗台(下図④移乗台一例))・手すり」、ここで90%以上がお勧めできない宿泊施設となる。浴室内の動線は、浴室入口→①カラン→姿勢保持②→③湯船→④湯船に入る→④湯船から出る③カラン→②姿勢保持→①浴室出口となり、普段車椅子の乗っている人は、転倒などがなく安全に移動するための入浴補助具が必要になります。①はシャワーキャリーまたは洋室用車椅子、②はシャワーチェアまたはシャワーキャリーまたは洋室用車椅子、③はシャワーキャリーまたは洋室用車椅子、④は移乗台(バスボード・腰掛けスペース・移乗台)があれば良い。
この基準で厳選して行くと、2023年5月6日現在、楽天トラベルには34,756の宿泊施設が登録されていますが、キーワード「バリアフリー」検索すると6,320、キーワード「バリアフリールーム」検索すると3,607、管理人の障害の程度に合うバリアフリーの宿は120軒ほどです。中には1軒もない県もあります。
①車椅子で乗れないエレベーター
②シャワーキャリー
③浴室用車椅子
④移乗台一例
⑤バスボード
⑥入浴用リフト
  
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